創価大学、全国のテストセンターを活用したCBT方式の一般入試(後期)を私大で初導入

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背景

世界69か国・地域において、271の大学と交流をもつ「グローバル」な創価大学。私立大学として初めてCBT方式での一般入試を全国のテストセンターで実施

私立大学として初めて、全国規模でテストセンターを活用したCBT(Computer-based Testing、以下、CBT)方式の一般入試を実施した創価大学。グローバルな教育環境と先進的な入試改革に取り組むその背景には、どのような課題と成果があったのか。アドミッションズセンターの中山氏と藤下氏に、導入の経緯と今後の展望を伺いました。

今年で55周年(※1)を迎えた創価大学は、10か年の中長期計画として策定した「Soka University Grand Design 2021-2030」において、「価値創造を実践する『世界市民』を育む大学」を掲げ、教育・研究・SDGs・ダイバーシティを柱として取り組んでいます。本学の特徴は「グローバル」であり、現在、世界69か国・地域において271の大学と交流があります (※2)。 本学の留学生の割合は17.5%、日本人学生(学部生)の留学比率は20.5% (※3) 。2010年からは、海外大学院進学や世界で活躍する力を養う「GCP(Global Citizenship Program)」を実施し、多くの人材を輩出しています。 こうした取り組みの中、英国の新聞The Timesが毎年発行する高等教育情報誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」では、「THE日本大学ランキング」の「国際性」分野において8位(2025年度)にランクインしました。

本学では現在、2026年を目指しカリキュラムを改革中です。経済学部と経営学部の学部統合や理工学部の新学科設置により、2026年度には7学部10学科となります。入試についても2026年度から新たに2つの入試を実施する予定です。 (詳細はこちら: https://www.soka.ac.jp/admissions/)

2025年度入試の一般入試(後期)2科目方式において、プロメトリック社のCBT方式を初めて導入しました。全国から志願者が集まる本学では、以前から地方会場での入試を実施し、さらなる受験機会を拡充したいと考えていたため、プロメトリック社が保有する充実した地方会場と費用は魅力でした。

※1. 2025年5月時点
※2. 2025年4月時点
※3. 2024年8月31日時点

導入プロセス

プロメトリック社との緊密なやりとりの中で進めたプロジェクト。セキュリティ万全の環境で、CBT方式初実施の入試を安全かつ円滑に実施できた

CBT導入までの検討期間は5年ほどでした。多くの大学では現在も紙を使った試験(Paper Based Testing以下、PBT)が主流です。CBT方式の入試は大学として先行事例が少なく、受験生への公平性担保や新方式で時間と労力が増すとみられる運営準備をどうするかについて、学内で何度も議論を重ねました。導入決定から入試実施までの間は、毎週の定例会議やテストセンターの見学などを通じたプロメトリック社との緊密なやりとりの中で、準備を進めることができました。システムの導入だけでなく運用面もこちらの要望に丁寧に対応いただき、最終的にPBTに近い形での入試を実施することができました。

重要視していた項目のひとつである「セキュリティ」に関しては、当日の受験生の動きや不測の事態への対応を事前に細かく確認でき、これなら安心して受験していただくことができる、プロメトリック社に任せられると判断しました。近年大学入学共通テストなどで問題となった不正行為の発生を懸念していましたが、万全なセキュリティ環境のプロメトリック社のテストセンターを活用することで、無事故で実施することができました。会場を利用した受験生のアンケートでは、「テストセンターの環境・設備を快適に感じた」というご回答を多くいただきました。

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導入効果

PBTに比べるとCBTはコストを抑えられる。会場運営に必要な人員も減り、教職員の負担軽減につながった

無事に入試を終え、現在CBT導入の成果や次年度以降に向けた改善点を検証中ですが、プロメトリック社の地方会場で試験が受けられるという選択肢は、受験生の負担軽減につながったととらえています。一般入試(後期)として実施することで、進路選択にある受験生が最後まで挑戦できる環境を用意できた手応えを感じています。

初回のCBTは導入コストがかかりましたが、本学実施の全学統一入試・一般入試のPBT方式の実施に比較すると、費用を抑えられると感じました。これまでは入試前日・当日に他部署にも会場運営の役員依頼をしていましたが、テストセンターで実施することによってアドミッションズセンターの教職員だけで運用可能になりました。アドミッションズセンターで必要な人員も、PBTと比べて10人から5人へと半分に減らすことができ、CBTによって入試を運営する教職員の負担が大きく軽減したことを実感しています。
 

今後の展望

教育分野での「入試とデジタルの融合」を促すCBT。導入は「大学として受験生になにを提供できるか」という本質的な議論を深める機会にもなった

CBTを活用した入試でみえた課題のひとつは、受験生のPCスキルです。本学のCBT試験はクリックとテンキー入力のみで解答できますが、受験生が「PCに触れた経験が少ない」「PCを使用して試験を解くことに慣れていない」場合、CBTを難しいと感じるケースがあるようです。CBTは大きな可能性をもっていますが、そのメリットを最大限に活かすには、受験生がPCやタブレットなどのIT機器を利用する際のハードルを下げる必要があります。可能であればプロメトリック社には、受験生がIT機器に慣れるための活動やサポートも期待します。多くの受験生にとってCBTが当たり前になれば、移動の問題で諦めていた受験の機会が増え、受験生にとって将来の選択肢が増えることに繋がるでしょう。

社会全体がDXに移行する中で、公平性と厳格性を担保した「入試とデジタルの融合」は今後大きなテーマとなっていくと考えています。本学が入試のオンライン化に着手したのは、コロナ禍がきっかけでした。コロナ禍によって社会全体が大きな痛手を受ける中、八王子にある本学キャンパスで実施していた「PASCAL入試」(グループディスカッション+面接)を、オンラインに移行したことがその第一歩でした。
今回のCBT導入は、本学にとって、大きな挑戦になりました。この新たな取り組みは、本学が受験生にどんな価値を提供できるのかについて、学内で議論を深めるきっかけになったと思います。プロメトリック社と実現できたこの実績を大切にしながら、今後もより多くの学生に学びの場を提供する取り組みを続けていきます。

 

取材日:2025年5月20日